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投資コラム

イギリス(英国)EU離脱はなぜ起きたのか?3つの理由と今後の世界経済

投稿日:2016年6月29日 更新日:

グローバル化や格差拡大に対する反感が予想以上に強まっている

ご承知のように、EU離脱を巡るイギリスの国民投票はやや予想外の離脱多数となり、離脱が決まりました。予想以上に離脱票が多かったことについては、以下の3つの要因が重なったことが原因とみられます。

第1に、EU懐疑論が思った以上に強かった

EUは負担金や制度・法律面での煩雑さが問題とされていますが、イギリスの国民感情は戦前のパクスブリタニカの繁栄の記憶もあってか旧植民地諸国との関係を重視し、大陸欧州から距離を置こうという姿勢が強く、また、EUの官僚制に対する拒否反応も強い

第2に、グローバル化への反感が離脱票につながった

イギリスは、特に「ウィンブルドン現象」という結果を招くような外資流入促進策や移民の流入で経済成長を促進してきました。
(図1、表1参照)

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そうしたグローバル促進策はイギリスの経済成長をも促進しましたが、それによって失職、あるいは賃金低下の憂き目に合う労働者の反感も予想以上に強いことが示されました。

第3に、エスタブリッシュメント層(特権・支配階層)への庶民の反感が予想以上に強かった

グローバル化や行き過ぎた規制緩和に伴って、1%のエスタブリッシュメント層(特権・支配階層)が99%の資産を保有すると言われるように、格差拡大が深刻化しています。

イギリスを含めた各国当局は、こうした問題に対応した再分配策を講じておらず、逆に、パナマ文書によってエスタブリッシュメント層は税制面で優遇されているという問題が浮上しました。キャメロン首相も個人的に税逃れ問題に関わっていたことで、国民の反感が一層強まりました。

「離脱はイギリスのGDPを何%減少させる」といった類の試算もエスタブリッシュメント層の脅しだとして、かえって反感を招いたのではないかといった見方が多いです。

金融市場は「次の離脱国」探しに専念。ただし、実際の追随は考えにくい

こうした点を念頭に、今後の動きについては以下の点に注目する必要があると思います。

まず、イギリスがEU離脱をいつ通告するか。

EU条約第50条では、「脱退を決定する国はその意図を欧州理事会に通告する」「通告後2年間で基本条約は当該国に適用されなくなる」としており、「通告」がEUの一員であることの恩恵を受けられる期間である、「2年」のカウントダウンの始まりを意味します。

キャメロン首相は即時通告を表明しており、今週、28~29日のEU首脳会議に注目されますが、離脱派は時間稼ぎのために一定の目途が立った段階で正式通告すべきだと主張しています。

脱退は「憲法上の要件に従って」行わなければいけないとされることもあり、正式通告には、イギリス下院での採決も必要ともされます。

このようにイギリス側にとっては、「2年」の猶予期間を実質的に引き延ばすことが可能ですが、金融市場などでは、この遅れが先行き不透明感を高めるというマイナス面もあるかもしれません。

次に、EUの他の諸国への波及はあるのかという点。

EU内各国でEU懐疑派の政党が勢力を伸ばしているのは事実です。

実際に17年3月にオランダの下院選挙、4~5月にフランスの大統領選挙、8~10月にドイツ連邦議会選挙が予定されているため、注目する必要があります。

ですが、今回のイギリス国民投票の結果判明後に実施されたスペイン総選挙(26日投開票)では、現ラホイ首相の与党・国民党が前回を上回る議席を確保し、逆に反エスタブリッシュメントを掲げる新興政党のポデモスが伸び悩みました。

EU内でもかなり事情が異なることがわかります。

貿易面や補助金などの面でのEUへの依存度の高さという点からみると、ハンガリー、ポーランドなど東欧やエストニア、リトアニアなどバルト諸国、さらにポルトガル、アイルランドなどはEUへの経済依存度が高く、このため離脱のハードルは高いです。

また、EUに対する国民感情についても、EUの一員でいることに対し居心地の悪さを感ずるのはイギリスだけの特殊事情であり、多くの国ではこのようなEU懐疑論はイギリスほど強くありません。

こうした点からみると、今後予定される選挙などで現政権批判の票が伸びたとしても、それが今回のようにEU離脱に結びつく可能性は小さいとみられます。

オランダでは極右勢力の自由党の支持率が最も高いですが、同党が過半数を得る公算は小さいです。

フランスでは反EU、移民排斥を掲げる、国民戦線のルペン党首の支持率は14年初め頃の35%程度をピークに低下し、現在は20~25%程度にとどまります。

ドイツでも今の状況であれば、ユーロ懐疑派の「ドイツのための選択肢」は議席獲得の最低得票率(5%)獲得がやっと思われます。

たとえ、今回のイギリスと同様な国民投票が実施されたとしても、EUへの依存度が低く、しかももともと国民感情がEUに否定的なイギリスと同様の結果になるとは考えにくいです。

金融市場ではイタリア、スペインやポルトガルなどの国債利回りが上昇し、対独スプレッドが拡大しており、当面は次の離脱国探しにやっきになるかと思われます。(図2参照)

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そうした動きが市場をある程度動揺させることはあるかもしれませんが、12~13年のような大きな動きになることはないのではないかと思われます。

他方、スコットランドや北アイルランドなどでイギリスから独立し、EUに加盟しようという動きが強まると予想されます。その際、イギリスは北海油田などの資源を失うおそれがあり、それが一段のポンド安を招くおそれがある点に注意しなければならなりません。

次はユーロ分裂より、むしろ米国孤立主義化のリスクシナリオに警戒すべき

今回のイギリス国民投票の結果は、最初に述べたとおり、単なるEU懐疑論の強まりではなく、反グローバル化や反エスタブリッシュメントの動きが重なっていたということがわかります。

だとすれば、次に警戒しなければならないのは、EU内の別の国がEUを離脱することによるユーロ分裂というより、むしろ米国の大統領選挙でのトランプ勝利による米国の孤立主義化のシナリオかもしれません。

11月大統領選挙前の利上げの可能性は極めて小さくなったとみられ、今、取り沙汰されている為替介入についても、そうした円安誘導策はトランプを有利にしかねないことから、実際には考えにくいです。

日本側がヘリコプターマネー的な政策を打ち出すといったことでもない限り、円高は長引くかもしれません。

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